鈍感な君へ
俺はそこから動けなかった




ただひたすらあの人が去っていった
道を眺めてた




雨に濡れて
前髪から雫が落ちる






どれくらいそうしていただろう…





「あの…晴樹…?」



不意に呼ばれて肩が揺れる




「…っあやな…」





強張ってた体から力が抜ける





真っ赤な傘に俺を入れようとしてくれる
彩奈だけど、俺はそれを断った






そして俺はこれ以上踏み入られるのが
怖くなって逃げだした





彩奈には、
ばあちゃんのことを知ってる
彩奈には特に
知られたくなかった



もしかしかしたら、
彩奈のことも苦しめてるのかな

俺…




皆のこと
気付かないうちに苦しめてるのかも
しれないな…



――…もう、
  どうしたらいいか分からない
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