鈍感な君へ
真っ白になっていく頭の中で
不意に浮かんだのは
ばあちゃんの笑顔だった





「ただいま…」





家に入るとすぐにばあちゃんが
タオルを持って出迎えてくれる




「あんた今日傘持ってかなかったら
 心配したんだよ」





そう言いながら頭を拭いてくれる




だけど、何も言わなかった





「お風呂、沸いてるから入ってきなさい」




「…」



お礼も返事も、
する気になれなかった





「晴樹…?」




スッとばあちゃんの横を通り過ぎ
風呂場に向かう


悲しい顔が横切った



何でだろう?


本当は裏切られた気持ちでいっぱいだった




離れていかないって
 
約束したのに、離れてく




そんなの分かってた



――…結局皆口だけだって




でも、俺はばあちゃんのことだけは


信じてたのに―――




置いていかないでって言えたら



何か、変わるのかな?
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