鈍感な君へ
「おう。じゃあ行ってくる」


「うんっ。いってらっしゃい」



そうあたしが言うと晴樹は今までに見たことない笑い方をした


困ったような、悲しそうな、切なそうな、よく分かんないけど


私の好きな笑顔はなかった



「…いってきます」



そう言って部屋を出て行った


取り残されたあたしは少し違和感を覚えながらもさほど気にすることはなかった


晴樹の部屋を見渡せばかなりシンプルでベットと小さいテーブルがあって少しだけ本とか学校で使う物が置いてあるだけ


もっとごちゃごちゃした感じだと思っていたから意外


そしてふとベットの下に目をやると何かがあるのが分かった



まさか、エロ本…?


たしかに晴樹ならありそうっ


あたしは好奇心に負けそれに手を伸ばした


でも出てきたのは想像していた物ではなく意外な物だった



「…これは、写真?」



出てきたのは埃に塗れた写真だ



ふーと息を吹きかけるとぶわっと舞った



「うわっ」


顔の前で手を振って埃を払う


そして写真に視線を戻す



「これは…晴樹の、お母さんと、お父さん…?」



そこに写っていたのは笑顔の夫婦の写真だった



目が晴樹とそっくりな女の人


2人とも左手の薬指に指輪が光ってた


「でもっ……」



あたしは晴樹の言葉を思い出す


【ばあちゃんと、2人暮らしだから】


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