Disposable
よくある新入り歓迎のリンチなど、ここにはない。

同室の男は、バニングより年下らしい。

「新入り、アンタ名前は?」

「…バニングだ」

バニングの名を聞いて、男はニッと笑う。

「俺はヒュー。ヒュー・ヴァレンタインだ」

どうやら同居人は気のいい男のようだった。

「早速だがバニング」

ヒューは声を潜める。

「この刑務所には、受刑者の間だけに存在する掟がある。刑務所のルール以上に大事な掟がな」

「掟?」

バニングが問い返す。

「細かい事は追々説明していくが、この刑務所には所長や看守以外にも、逆らっちゃいけない相手が何人か存在する。肩身の狭い思いをしたくなければ、そいつらには極力関わらないようにする事だ」

「…御忠告どうも」

バニングは頷いた。

ヒューとの会話を済ませ、ベッドに腰掛けるバニング。

しかし、彼の忠告は無駄になる。

翌日からバニングには、地獄のような日々が待っていたのだから。

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