Disposable
足音は、バニング達の前方の曲がり角を曲がり、その姿を現した。

大型軍用犬、ドーベルマン。

獰猛な事で知られる大型犬が、この下水道にいたのだ。

しかも1頭や2頭ではない。

10頭以上もの群れが、バニング達を凝視している。

…所長であるフォードとて、脱獄者がこの下水道を脱走経路に利用する事くらい予測していた。

その為、この下水道に数頭のドーベルマンを放し飼いにし、一週間に一度だけ餌を与えていた。

繁殖したものの、常に空腹状態のドーベルマン達は極端に凶暴化し、下水道に侵入してくる者は容赦なく襲うほどになっていた。

…餓えた眼が、バニング達を見つめる。

タイミングを見計らって。

「くっ!」

背を向け、バニング達は走り始めた!

同時に、放たれた矢のように、ドーベルマンの群れも追いかけてくる。

人間の足とドーベルマンの足。

逃げ切るのは不可能に近かった。

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