蒼空の下を、キミと2人で
蒼side
朝。



だいぶ歩けるようになったけど、食欲なくて、食べても吐く。



だから先生に鎖骨から点滴をされた。



そんなに痛くはなかったけど。



片方の手首が空いたから、にこからもらったリストバンドをつけた。



吐き気もだいぶおさまったし。



早くにこに会いてー。



コンコン



「蒼」



ドアを開けて入ってきたのは、母さんだった。



「仕事は?」



「今日は休み」



母さんが持ってきた袋の中には、大量の着替えと、本が入っていた。



「着たものは持って帰るからね」



「あぁ」



母さんは、俺の手首を見た。



「あら、にこちゃんから?」



なんて言おう。



なんか恥ずかしいし。



「そうだけど、なんか悪い?」



だから、つい口が悪くなった。



「そう」



意外にもあっさりだった。



母さんは、荷物をまとめ終わると、



「何か、ほしいものある?」



と聞いた。



「うーん、勉強道具!



どうせ暇だしな。



にこに負けるし」



俺は、本当はわかっていた。



もう学校には戻れないって。



そう言ったときの母さんの目が潤んでいたことも。



「わかった。



明日、持ってくるわね」



ドアを開けて、帰っていった。



売店に、何かを買いに行こうと思って、ドアに手をかけたとき。



「うっ…」



嗚咽の声が、ドア越しに聞こえた。



母さんだろう。



「…本当…情けないわ…」



壁にもたれかかっているようだった。
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