蒼空の下を、キミと2人で
「水瀬さん。


診察室へどうぞ」



息を飲んだ。



「先生っ、おばちゃん!



蒼のところに行っててもいいですか!?」



2人とも、静かに頷いた。



蒼の病室に走る。



あたりは暗くなっていた。



コンコン



返事はない。



そっとドアに手をかけて、少しずつドアを開けた。



「…蒼?」



蒼は目を閉じていた。



あの男の子みたいにならないよね?



そっと近づくと、布団が上下していて、あぁ、生きてる。



よかった、って思った。



やっぱり蒼はかっこいいな。



「ん…」



蒼が目を開けた。



「あれ…にこ…?」



酸素マスク越しに聞こえる声。



今にも消えてしまいそうで、耳を澄ませても聞こえにくいような小さな声。



「…蒼!」



蒼は、私の目元を触った。



驚くほど冷たい手。



「…にこ、泣いた…?」



なんて言おうか迷った。



正直に言うべきか。
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