かわいいあなたにマフラーを
街中を家に向かって一人で歩いていると、見知った人物の姿を見かけた。

静谷……?

風邪じゃ、なかったのか? 治ったのか?
それとも、俺が傷つけたストレスで休んでいたとしたら、少しは復活した?

俺は嬉しくなって、声をかけようとした。
声をかけて話して、誤解も解こう。

「しずた……っ!」
振りかけた手を、ゆるゆると降ろす。

隣に、男がいた……。

スーツを着こなして髪型もきっちり整えている、こげ茶色の髪の大人。

男に笑いかける静谷を、俺は遠くから見つめるしかなかった。

なんで、どうして……?
もう俺が好きじゃ、なくなった……?
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