虹色研究部 - ニジケン -
教室に戻る途中、トミーと雑談をしながら職員室の前を歩いていると、壁に飾られた絵画を眺めるスーツの男性が目に入った。

見知らぬ横顔を見つめていると、その男性は私達に気付いてこちらに視線を移す。


「……こんにちは」


男性は、目をキュッと細め、私達に笑いかけた。低い声は、私達を怖がらせないようにしているのか、優し気に響く。

上品な印象の、素敵な大人の笑顔だ。年齢は四十代前半だろうか。


栗色のスーツを綺麗に着こなした細身の身体に、キチッと纏められたオールバックの髪。鼻筋の通った高い鼻に、吸い込まれそうな大きな黒い目。

ヒゲなんかもなく、綺麗な白い肌が清潔感を与えている。


「あっ。こ、こんにちは」


緊張した私からは、少し裏返った声が出てしまった。


すると男性は、クスッと崩した様に笑う。先ほどまでと違い、幼い印象を受ける笑顔だ。
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