虹色研究部 - ニジケン -
「あぁ、ごめんね。可愛らしいな、と思ってね」


男性は口元に人差し指と中指を当てながら、クスクスと笑う。


「えっ、あの……」


返しに困ってうろたえる私の腕を、トミーが引っ張るように掴む。
彼女の眉間には、不信感を示すシワが刻まれていた。


「……私達、もうすぐ授業が始まるんで、これで」


愛想笑いを作ったトミーは、男性の返事も待たずに「行くよ」と言って歩き出す。


「五限目は授業じゃなくて、緊急で全校集会になると思うよ」


男性はそう言うと、余裕のある笑みを浮かべて、去っていく私たちに軽く手を振った。


「……あの人、学校の関係者みたいだね。見た事ないけど、先生かな?」


私の言葉を聞いたトミーはピタリと止まり、掴んでいた私の腕を解放する。
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