虹色研究部 - ニジケン -
「しかし、蘭にまた『父さん』って呼ばれる日が来るとは……思ってなかったな」


そう呟いた理事長は、未だに起きない蘭先輩の顔をジッと見つめると、表情を柔らかく緩めた。


「では、私はこれで失礼させてもらうよ。飛行機の時間があるんだ。蘭が起きたらよろしくと伝えておいてくれ」


理事長はおもむろに立ち上がると、國枝先輩にスッと手を伸ばした。

二人はガッチリと握手を交わすと、互いに軽く一礼する。

どこか神妙なその光景を、私はドキドキしながら眺めていた。


やがて理事長は、振り返る事なく校庭を後にする。

私達は栗色のスーツが見えなくなるまで、その広い背中を眺めていた。
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