ドS王子と平凡少女
無視するか……
いやでも……
私にはそんなことできない。
「あっ!先輩!おはようございますっ!」
私は振り向いて満面の笑でそう言った。
「おう!おはよ!」
「あれ、その隣の人……もしかして……」
もしかしたら私の勘違いかもしれない。
先輩だったらきっと……そんなんじゃねぇよって笑ってくれる……
「あっ、気づいちゃった?俺の彼女!」
あぁ……そっか。
そうだよね。
淡い期待をしてしまった私が馬鹿だった。
「栗田夏美って言います。よろしくね、木下さん」
可愛い人じゃないか。
私なんか勝てるわけない。
「私は木下由愛って言います!
私よりも先輩ですよね?呼び捨てで呼んでください!」
ちゃんと笑えているだろうか。
これが、私の精一杯の挨拶だった。
「うん!よろしくね由愛ちゃん!」
「はいっ!じゃあ私はお邪魔しちゃったら悪いんでお先に失礼します!
先輩〜こんな可愛い彼女作っちゃって……大事にするんですよ!」
私はそう言って先輩達に背を向けて走り去った。
こんなに先輩の照れた顔と幸せそうな顔を私は見ていられる自信なんてなかったから。