*片恋日和*
くじの順番を待っていると。
周りの女子の話があちこちから聞こえてきた。

「やっぱりさぁ…隣の席は南条くんが良いよねー」
「うんうん!!格好よくて、優しくて、成績優秀だし」

南条くんと言うのは
うちのクラスで一番人気の男子・南条翔くんのこと。
綺麗な顔立ちをしていて、背が高い。
それでいて、優しくって成績優秀。
完璧な男の子―――。
わたしみたいな地味な女子とは程遠い、キラキラと輝く太陽みたいな人―――。

「雪音ー!!くじ、まわってきたぞー」

後ろの席の七海がわたしの背中をトントン、軽く叩きながらそう言った。

「ありがとー」

わたしはそう一言お礼を言い、袋の中のくじに手を入れて引いた。

"9"

紙には、そう大きく示されていた。
9番かぁ。
黒板に目を向けると、すでに先生が番号を書き込んでいたみたいで
どこら辺かの席かは分かった。

わたしの席は…ラッキー!!後ろの方だ。

心のなかでそうガッツポーズをしていると

「雪音!!どこら辺??」

七海に小声でそう聞かれた。
わたしは笑顔で答えた。

「えへへ…窓際の一番後ろだよー」
「うっわ!!めっちゃ良いじゃーん!!あたしなんか教卓の目の前の席だよー!!もう最悪」
「ドンマイだねー」

それから全員がくじを引き終わったので
席を移動させると。
隣の席の人に目を疑った。
だって、移動した席の隣が―――。



南条くんだったから。





「もしかして…隣、佐倉さん??」

頭のなかが整理できていなくて。
混乱していると
不意に南条くんにそう聞かれた。
わたしは小さく頷いてから。

「う、うん…よろしく、ね??」

か細い声だったから。
きっと、聞こえてないだろうなぁと
思っていたのに―――。

「うん。よろしくね」

南条くんは、わたしの方を見て。
ニコッと笑って優しい声でそう言ってくれた。

不覚にも、その瞬間。
鼓動が大きく高鳴ってしまった。

駄目だよ―――。
ドキドキしちゃ、駄目。
この人は、 わたしなんかが
好きになっていい相手じゃない―――。



わたしは、自分に必死にそう言い聞かせて。
極力、南条くんとは目を合わせないように
その一日は一度も横を見ないで過ごして終わった―――。
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