イケメン副社長にほだされました
私が15分かけてやる作業を、真司は今30分かけてやっている。
カルキ抜きした水を水槽へ注いでる真司の真剣な顔がおかしくて笑いそうになりながらずっと見守っていると、ふいに真司が視線を私に移した。
よそ見をした所為で勢いを増してしまった水に魚たちが一瞬ふわりと舞う。
「沙耶香、今度の誕生日欲しいものあるか?」
誕生日、か。
真司と分かり合えてから、初めて迎える私の誕生日まであと1ヶ月。
今までは当たり前にスルーされていたその日を覚えてさえいないと思っていたのに。
誕生日を覚えてくれているだけで、祝ってくれるだけで幸せだ。
「ナンヨウハギ飼いたい。この前借りて見た映画にでてきたやつ!」
「あの縞模様のやつか?」
「違う、違う。その仲間。」
「青いほうか。」
レンタルショップでは嫌そうな顔をしていたのに、彼は案外真剣に見ていたらしい。