イケメン副社長にほだされました


「うちに忘れてたんだけど、大事な書類みたいだから。」


控え目にか細い声で言う彼女の言葉が頭の中で繰り返される。


うちに忘れたってどういうこと…?


「あの失礼ですが、あなたは?」

「中咲です。」

「あぁ!すみません、今副社長呼びますね。」


女の人の名前を聞くと合点がいったように、『副社長ー!』と事務員さんの呼ぶ声に慌てて、死角になりそうな廊下の曲がり角に隠れた。


心臓が痛いくらいに脈打っている。口から出そう。




「泉?」


これは、真司の声だ。

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