姫サマはキワドいのがお好き☆
「どう、ワタシ。この美しいワタシの弾避けができるなんて、アナタほんとに光栄ね。」
姫が瓶に残っていたワインをすべで自分のグラスについだ。
「でもね、こんなにワタシが美しいからって…こんなにワタシが偉大からって…命を狙われるのがごめんだわ…。」
姫がグラスのワインを一息で飲み干す。酔いが回るにつれて口数が増えてくる。
「あーあ。もう無くなっちゃったっ…」
姫が空になった瓶をさかさまにひっくり返した。
「まぁ、もう飲むのをやめたらどーですかね、ねっ。」
ヒカルはとりあえず微笑んでみる。だがまったく通じない。
「なんかないかなー。あっ、そういえばお父様の部屋からとってきたのがっ…。」
姫の感情がコロコロかわる。いまなんか嬉しそうに大きな飾棚の奥を探っている。
飾棚の手前に入っていたワンピースやティーシャツが床にほおりだされて散乱した。
「さぁ弾避け、ごらんなさい。次はこれを飲むわよ…。」
姫が飾棚の中から一本の瓶を引きずり出した。
「あー。グレン・モールの10年物じゃないですか…。せっかくなので少しいただきます。」
ヒカルが迷わず自分のグラスを突き出した。
「ふっ…。それなら今までの非をわびて、命をかけてわたくしを守ることをここで誓いなさい。それこそ弾避けじゃなくてわたくしをつれて弾丸をよけるくらいの才能がないとねっ、認められませんわ。」
姫がグレン・モールを惜しげもなくグラスになみなみと注いだ。
「まぁもともとそのつもりですし…。それよりそれはウイスキーですよ。そんな…むちゃくちゃな。」
「うるさいわねー、弾避け。あんたにもついであげるから心配しないの…。あっ、弾避けなんて名前だっけ?」
「はいっ、姫。もうお忘れになったんですか…。ヒカルです。しかも弾避けじゃなくてあなたの彼氏役として呼ばれたんですよ。」
姫は長く白い足をぐっと伸ばした。フワフワしたスカートが優雅に動く。
「はいっ、グッとやりなさい。乾杯。」
そういうと姫はアルコール四〇度を一息に飲み干した。
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