あたしはそれでもアキが好き
あたしは頷く。


数年間学校にすみついていた野良猫はもうずいぶん年寄りで、あまり可愛い顔もしていなかったため生徒たちからは見て見ぬふりをされていた。


でも、そんな猫にアキが毎日エサを上げていたこと、あたしは知っている。


「でも、あの猫はもう死んじゃったよ」


アキの言葉にあたしは言葉に詰まった。


そう。


一か月前校庭でグッタリとしている猫が発見された。


最初は老衰だと思われていたけれど、体中から血が流れていて虐待のような痕跡があり、後日数人の生徒が猫を殺したとして大問題になっていた。


「俺がエサをやっていなければ、あんな悲惨な死に方はしなかったかもしれない」


「そんな……!」


すぐに否定しようと思ったのに、アキの表情があまりにも真剣で、あたしは言葉を無くしてしまった。


アキは本当にそんな事を思っているのだろうか。


猫を虐待して殺したのは他の生徒だというのに、毎日エサをやっていた自分が悪いと感じていたのだろうか。


そんなの、辛すぎる……!
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