あたしはそれでもアキが好き
「悪いけど、俺は優しくなんてないよ」


アキはそう言い立ち上がった。


アキに手を掴まれて、立ち上がるあたし。


あぁ……帰れって言われるのかな。


上手い言葉も見つけられずアキの心に寄り添う事もできなくて……。


ジワリと涙が浮かんできたその時だった。


突然アキがあたしの体をベッドへと押し倒したのだ。


突然すぎて何が起こったのか理解できず、馬乗りになっているアキをぼんやりと見つめる。


「その程度で俺の事理解したつもりかよ」


低く怒りを込めたアキの声。


「アキ……?」


いつもと違うその姿にあたしは自分の背中が寒くなるのを感じていた。


だけどそれ以上に、怒っているアキの顔がどこか泣いているように見えて……。


「どうしたの、アキ?」


あたしはそう聞いていた。


そんなシチュエーションでそんな事を聞くなんてと、自分でもおかしくなってしまう。


あたし、今アキに押し倒されてるんだよ?


大好きな、アキに。


抵抗もできずジッと秋を見上げるあたし。


するとアキは下唇を噛みしめた。
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