あたしはそれでもアキが好き
薄くて血色のいい唇から血が流れる。


「アキ……」


その唇に触れようと手を伸ばす。


すると次の瞬間、アキがあたしの手を握り、そして自分の胸へと押し当てていたのだ。


アキの鼓動を、あたしの手を伝わって感じる事ができる。


すごく早い鼓動。


でも、それよりなにより……アキの胸はまるで女性のように膨らんでいたのだ。


「え……なんで?」


あたしは思わず手をひっこめ、小さな声でそう呟いた。


そして同時に、思春期には男性でも胸が膨らむことがあると聞いた事があるのを思い出した。


「もしかして、これで悩んでたの?」


あたしはそう聞く。


あたしにあんなことを言ったのは、自分の胸が膨らんできたことを悩んでいたからかもしれない。


「大丈夫だよアキ。思春期の時にはこういうことも……」


「違う!!」


アキはあたしの言葉を遮って叫んだ。


「へ……?」


「俺は性別のない男女なんだ」


アキはそう言い、泣きそうな顔をして、笑った。


「何を言ってるの……?」


「……俺は4月頃倒れたんだ」


「知ってる」


「検査の結果。俺の体の中には女性器があることがわかった」
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