あたしはそれでもアキが好き
彼の言葉にあたしは目を見開き、そして思わず笑い出していた。


2人して同時に同じ事をかんがえていたなんて、とてもおかしい。


「なんで笑うんだよ。俺にはもったいない花嫁さんだなぁと思ったんだけど?」


「そうなんだ? きっとあたしたち、とても中の良い夫婦になれるわよ」


あたしはそう返事をして、ようやく笑いがおさまった。


緊張していたのが嘘のようにリラックスできていることに気が付く。


それは彼も同じようで、息を吐き出しながら椅子に座った。


「あのさぁ美奈」


「なに?」


「俺たち夫婦になるだろ」


「そうね」


「その前に、1つだけ聞きたいことがある」


「え……?」


あたしは少し首を傾げて彼を見た。


彼と結婚を決めてから、彼にはいろんな話をしてきた。


隠し事なんてなにもない。


「君の、恋愛の話だよ」


彼にそう言われ、あたしは「あ……」と、呟いた。


「君は今まで誰とも付き合っていないと言ったね。その言葉は信じてる。でも、今までに好きな相手くらいはいたんだろ?」


あたしは無言で彼を見つめた。


彼の言う通り、あたしにだって好きな人くらいいた。


でもそれは、遠い昔の事で……。


「話してくれないか?」


「……少し、重たい話になるよ?」


「それでもいい。美奈がどんな相手を好きだったのか、知っておきたい」


彼の言葉に、あたしはゆっくりと口を開いた……。
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