あたしはそれでもアキが好き

今まで男として生きて来たアキがすぐに男として生きていくことを選ばなかった理由が、そこに書いてあった。


「手術を受け、女として生きていた方が健康面で安定する場合もある……」


その瞬間、あたしは愕然としてしまった。


だからアキは悩んでいたんだ。


だけど考えればそれは当然の事だった。


アキは体内で生理が始まっているかもしれないのだ。


体内にとどまった血液はどこへ行ってしまうのか？


外にでなければいけないものがその場に止まるしかできなかったとしたら、どうなるのか？


男でいる限り、アキはまた倒れてしまうかもしれない。


「そんなの……やだよ……」


あたしはスマホを握りしめて呟いた。


どうしてアキがそんな事になったの？


すごく低い確率なのに、どうしてアキなの？


アキは何も悪くない。


アキの両親だって何も悪くない。


誰も責める事のできない、やり場のない悔しさがあたしの胸に突き上げて来たのだった……。