あたしはそれでもアキが好き
アキは今年の4月に倒れ、2週間ほど入院している。


その事で先生に呼ばれて職員室にいるのだ。


「そろそろ来るかなぁ」


あたしはそう呟き、階段へ視線を向ける。


下駄箱の正面には階段があり、その真上が職員室になっていた。


だからここで待っていれば必ずアキに会えるのだ。


自分の心臓がドクドクと高鳴り始めた時、階段を下りて来る１つの足音が聞こえて来た。


あたしはギュッと手を握りしめて階段を見つめる。


白いシューズと黒い学生ズボンが見えて、心臓がドクンッと高鳴った。


そしてアキの顔が見えて、あたしと目が合う。


「坂野……？」


アキが不思議そうな表情を浮かべてあたしの苗字を呼んだ。


「も、もう！　だから下の名前の美奈って呼んでって、いつも言ってるのに」


いつもと同じ調子でそう言うあたし。


だけどあたしの心臓は今にも張り裂けてしまいそうなほど緊張していた。
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