♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「ふと、思い出したんだけれど。

多野たえ子が、谷本亮と言い合いになっていた時、彼女、こう言っていたじゃない。

『あの事と関係のないアンタが、なんで』って」

「…まあ、言われて見れば、言ってたような…」

「そう、確かに、関係ないんだよ、普通は。

特に彼にとって、一年前の喫煙事件に関しては」

「?」

「良く考えてみて。あの事件が起こったのは、一年前。つまり今頃だ。

所でその時、ハルちゃんはこの学校にいたかい?」

「いいえ。だってその頃はまだ中学校卒業すらしてないですもの」

「だよね。じゃあ、君と同学年の谷本亮は?」

「それは当然、その当時では谷本さんも中学生だからまだ…あっ!」

「そうなんだ。実質的な迷惑を被ったのは、僕と同じ現二年生のかるた部員だけで、月山さんや谷本亮は、部外者なはずなんだ。

…仮に迷惑を被った二年生を想って怒ったにしても、異常だと思うんだよ、あの怒り方は」

「確かに」

「一年前の事件に直接関わり合いがないにも関わらず、多野たえ子を憎む理由…


それは、人物Aが城田結ではなく、かつ多野たえ子に復讐を考えている人物が、城田結の知り合いなら、死んでしまった彼女の代わりに復讐しようと考えていてもおかしくはない。

つまり、もしかしたら谷本亮は、城田結とゆかりのある人物じゃあないのかなって思ったのさ」

春子は、礼士の推理を聞いて、う〜んとうなった。

「確かに、確かにそう考えられなくはないけれど…」

「当然、まだまだ推測の域を出てないさ。

だからハルちゃん、明日で良いから、月山さんにそれとなく谷本君の情報を仕入れていて欲しいんだ。

その代わり僕は僕で、あの本を今から地元の図書館で置いていないか探してみようと思う。

じゃあ、今日はこれぐらいにして帰ろう、ハルちゃん」
< 15 / 41 >

この作品をシェア

pagetop