♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「確かに、ハルちゃんの言う通りだよ。

彼が…谷本君が復讐のために行おうとしている事は、どれも不自然な事だらけだ。

彼はそれを、不自然だって思っていないのかな?

…あれ?どうかした、ハルちゃん?」

「今、何て言いましたか?」

「何って…いや、彼は自分のやろうとしている事が、不自然だって思わないのかって…」

「もしかしたら、それが第三の結末の、本当の答えかも!

…えっと、だとすると、谷本さんが、そういう考えで動こうとしているとすると、その意図とは…」

「あ、あの〜は、ハルちゃん?一体何を思いついて…」

「す、少し黙っていてください!

…えっと、後、この事に対して結びつきそうな情報とすれば…

何でも良いから思い出すのよ、春子!」

頭を抱えて、必死になって何かに対して考え込んでいる春子。そしてその様子を、目をパチクリしながらスマートフォン越しに待機している礼士。

しばらく、その様な状態が続いていた二人だったが、突然の春子のつぶやきにより、その状態から二人は解き放たれた。

「…名誉を回復する戦い…」

「えっ?」

「谷本さんが、社殿の前で言っていた言葉です。

ねえ、礼士先輩?所で、連帯責任って、どういう性質を持つものなんでしょうね?」

「?」

「連帯責任によって、その当時…というか、今においても、たえ子さんではなく、『かるた部』としてのイメージって、どういったものになっているんでしょうか?」

「…こんなくだらない事を起こして、だらしない部だな、って、やはりみんなからは少なからずとも思われているだろうね」

「それは、『部』だけではなく、やはり『部員一人一人』に対しても、そういったレッテルを貼られてしまうものでしょうか?」

「そりゃあそうじゃないかな。それが連帯責任の性質だと思うよ。

よく考えてごらんよ。もしハルちゃんが去年一年生で、かるた部を熱心に応援しているファンだったとしたら、喫煙事件後、たえ子さんはもちろん、かるた部の誰に出会ったとしても、その事について『何やってんのよ!』って責めたくはならないかい?

『あんたは、あの子の身内でしょ?』って…」

成程、と、右手をほおにそえながら少しの間何かを考え込んでいた春子。

そして、春子は礼士にこう言った。

「…そのレッテルって、一度ついてしまうとやっぱり剥がすことって、難しいものでしょうか?」

「そりゃあ、そうだろうね。

少なくとも、記憶喪失にでもならない限り、かるた部が、そして部員が受けた不名誉は、一年前の事件を知っている人達の記憶から消し去る事なんてできないだろうね。

そして今思えば、僕達がかるた部にお邪魔した時、僕が去年のかるた部について尋ねた事に対しての、あの部員達の態度。

もしかしたらあの人達も、出会う人出会う人から、散々その事件に対しての嫌味を言われ続けてきた犠牲者だったんじゃあないかな。

…所で、何でハルちゃんはそんな事を急に言い出したの?」
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