♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「…」

「あれ?は、ハルちゃん?」

「礼士先輩…もし、もしですよ、城田さんが受けたとされる不名誉の正体が、今私達が話していた連帯責任によるマイナスイメージの事だったんだとしたら、谷本さんが、わざわざ明日に事件を起こそうとしている理由が分かったような気がします。

そしてそれが真実なら、この事件を起こす事が、城田さんの名誉を回復する事及び、たえ子さんに対する復讐と、月山さんのかるた大会出場を両立させる事につながるんです」

何故?という、スマートフォンの向こうから聞こえてくる、礼士の、声。

それに対して、春子はひどく冷静な声で答えた。

「何故なら…」





「な、な、な、何だってぇ?

…は、ハルちゃん、き、君はたまに突拍子もない事を思いつくけれど、さすがにそれはないだろう!

あ、ありえないよそれは…」

「しかし、そう考えれば、全てつじつまが合うんですよ。

だから礼士先輩。もう電話切りますから、今すぐ寝てください、明日の為に。

…ただ、単に寝るのではなく、心の中でこう念じながら。

『例のアイテム、明日もってこ〜い!』

って!」

「?」





「…待ってたわ、ヴァンパイア礼士。

さあ、例のアイテム、早く渡しなさい…

って、あら?アンタ目の周りにくまができているけれど、一体どうし…」

「…オメーのせいだろうが、乙女座!」

「?」

一月二十五日、土曜日、午前十時四十七分。

全学年集会が行われる予定の体育館の中に、各学年の生徒達がぞろぞろと入っていく中、その入り口前でヴァンパイア礼士が来るのを待っていた春子。

そしていきなりヴァンパイア礼士に怒られた春子は、何で怒ってんのアンタ、とでも言いたそうな、不思議そうな表情をヴァンパイア礼士に向けた。

その表情を受けて、ああ〜っ、もう、と、ヴァンパイア礼士は髪の毛をくしゃくしゃとやりながら春子にこう言った。

「確かに礼士が家にいる時は、礼士の意識を乗っ取る事はしないけれど、一応意識は存在するから、お前達の会話は聞いているんですっ!

アイツに何度も言わせやがって!

羊が〜一匹、みたいなノリで一晩中礼士の奴、寝付いた後も、うなされながらクソ真面目にベッドの中でつぶやいてやがった。

アナタのせいで、寝不足に、なっちゃいましたっ!」

「あっ、ゴメンゴメン、所で早くアイテム頂戴(。-_-。)」

「軽っ!謝り方、軽っ!

それが人に謝罪する時の態度かよΣ(゚д゚lll)」
< 35 / 41 >

この作品をシェア

pagetop