♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
様々な感情の渦の中からの、そのたったの一声が何故か、亮を現実に引き戻すほどに亮の心に響いた。

辺りは今、静けさに支配されていた。

そして、そこで亮の目に映ったその声の持ち主。

それは、右手にしっかりとあのビデオカメラを握りしめた春子だった。

「私が、あなたを第三の結末に導く為のキーパーソンよ!」

「き、君は確かあの時の…」

「さあ、これがあなたが本当に戦うべき相手と向き合う為のアイテムよ!」

そう言って春子は、みんなが見守る中、ゆっくり、ゆっくりとではあるが、しっかりとした足取りで亮の前まで来ると、右手に握りしめていたビデオカメラを亮に託し、微笑みながらこう言った。

「このボタンを押せばオッケーよ。

これで、城田結さんという過去と、月山美加さんという未来を救って見せて」

「そうか…この中にその証拠が…」

そのビデオカメラを受け取った亮は、コクン、とうなずくと、風紀を取り締まる徳田先生をじっと見つめ、こう言った。

「徳田先生。あなたは先程、僕のタバコを発見して、連帯責任として月山さんを出場停止にしようと今なさってます。

…去年の状況と同じです」

「そうだな。去年の反省を生かせないとは、君やそこにいる多野だけでなく、かるた部員全体としてのモラルが…」

「…でももし、もしもこのタバコが先生に発見された事が、うかつに僕が持ち込んでしまった、ではなく、わざと僕が持ち込んだとしたら、どうですか?

もっと言えば、僕が月山さんを今度の大会に出場させない為に、わざと連帯責任を利用して今回の騒ぎを起こしたとしたら、どうですか?

それでも、あくまで連帯責任として、月山さんの大会出場権利を剥奪しようとしますか?

教えてください!」

「なっ、何だと⁉︎」

目を大きく見開いて、驚きの表情を見せる徳田先生と美加。

その様子を見守る周りの生徒たちの間からも、ざわめきが起こった。

「ば、バカな!

もし、それが真実だったとしたら、君はかるた部としてではなく、一個人として、月山に危害を加えただけ…

それを連帯責任と呼ぶには…」

「この少女を、覚えていますか?

この子は、昨年、ここにいる多野たえ子の喫煙事件に巻き込まれ、連帯責任として今回の月山さんと同じく大会出場停止を言い渡された、城田結…

僕の従姉です!」

そう言って、亮はポケットから城田結の写真の入ったロケットを、徳田先生に見せつけた。
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