囚われた瞳【琴子さんanother story】番外編2UP
慌てて社屋を出て、駅までの道のりをトボトボ歩く。

数ヶ月前に来た路地裏に目をやる。
この奥にあるはず。BAR Cheri Cherie…

いっそ、お酒を浴びるほど飲んで、現実を忘れてしまおうか…

ブンブンと頭を振る。

路地に向かいかけた足を、また駅に向ける。

ダメだ。私は晴を待つって決めたんだ。


自分の力で乗り越えてみせる。


でも…

晴のぬくもりがほしいよ。

その言葉がほしい。




綺麗な三日月が、都会の空に浮かぶ。

晴が笑った時の目にそっくりだ。



「どこにいるの……」



独り言が寒空にこぼれた。

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