囚われた瞳【琴子さんanother story】番外編2UP
岬編集長は、山陽出版の社屋を出て、大通りでタクシーを止めた。

『菊水庵』の門の前でタクシーが止まる。

タクシーから降りた私たちを、シックで上質な着物を着た女性と、男の人が出迎える。

「岬様でいらっしゃいますね?ようこそ、お越しくださいました。女将の菊乃でございます」

そう言って、女性がお辞儀をした。

綺麗だな…背筋がピンと伸びてて、丁寧にお辞儀をする菊乃さんをボーと見つめる。

「青山、入るぞ」

岬編集長に、そっと肩を抱かれ「菊水庵」の中へ、足を踏み入れる。


カコーーン…


庭の鹿威しが、綺麗な音を立てる。

おお、ザ・料亭だ。初めて来たよ。

広い玄関に、大きな縦長の花器に、ツツジに似た丸い花が豪快に生けてある。

何ていう花だろう?荻野君なら知ってるだろうな。

こんな些細な事でも、荻野君が頭に浮かぶ。

重症だ…

< 82 / 171 >

この作品をシェア

pagetop