青春はやってこない

「何言ってんの、お互い様でしょ？
あ、杏奈ちゃんあそこの高校生たちにお水お願いね」

そう言って蒼太さんは窓際のテーブルを一瞥した。

そこにはチャラチャラしてる男子高校生が5人「俺の勝ちー」「今回は陸斗くんでーす！」なんて言いながら騒々しく騒ぎ立てている。

「…はーい」

嫌だけど、仕事だから。

あたしはお水を5つトレイに載せると窓際のテーブルに向かった。

「お水をお持ちいたしました」

「おい陸斗！来たぞ！」「腰抜け～ビビリ発動か～？」「りっくっと！りっくっと！」

コップを持つ手が震える。怖い。男の人ってなんか苦手だ、こんな奴らなんかは特に。

「あの、注文お願いします」

すると、“陸斗”と呼ばれた人が口を開いた。

ウルフカットの黒髪に、ダークブラウンの大きな瞳に薄い唇。耳に光るシルバーのピアスが良く似合う、黄金色の肌。

「かしこまりました、何にいたしますか？」

端正なその顔があたしに余裕の笑みでほほ笑みかける。
まるで何もかも見透かすように。

「あなたを下さい」

…は？