青春はやってこない
「ギャハハ!」「陸とお前やっぱ外さねぇわ!」「よっ!おれらの期待のエース!」

残りの男どもが一層騒々しさを増したが、彼の表情は一切崩れない。

いい加減にしてよ、なんであたしがあんたらの遊び道具になんなきゃなんないわけ。

パッシャーン!

「…冷たっ」

気付けば、あたしが手に持っていたコップは空で。

「おい、陸斗ちょっとからかっただけじゃねーかよ!水かけることねーだろ!?」

ひとりが私に掴みかかろうとした、その時。

「申し訳ございませんでした。
お客様、どうぞお使い下さい。」

タオルを持った蒼太さんがサッとあたしの前に入った。

「悪かったな、杏奈ちゃん。
今日はもう奥で休んでていいから。」

なんで、蒼太さんがあたしに謝るのだろう。

シン、と静まり返った店内にいるのも肩身が狭くて。

「…ごめん、なさい」

あたしは逃げるように奥へ入った。

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