虹色ファインダー
「奏次郎、行っちゃうんだ」
思わず口から零れ落ちてしまった言葉。
奏次郎はまた勝ち気な笑顔を私に向けた。
「そう寂しがるな。お前は大丈夫だよ」
大丈夫って何よ。
そんな突き放すようなこと、言わないでよ。
「……やだ!まだ話したいことがあったの!行かないでよ、あかりさん、奏次郎を連れて行かないで!」
あかりさんは少し困ったように微笑む。
奏次郎は、私の頭を柔らかに撫でた。
「お前にはお前の、愛さなきゃならない人が居る。それは俺じゃないよ」
悲しかった。
博愛主義者みたいに言っておきながら、私のことは愛してなくて。
ねぇ、奏次郎。
もしも私の写真を撮ってって言ったら、あんたは一瞬でも私を愛しく思ってくれた?