星降夜
忘れられない
柊くん、と私は呼び止めて、ゆっくり振り返る柊くんの足元を見た。
なに、といつもの、変わらない私の好きな声が頭の上から降ってきた。
「もう会うのやめたい」
柊くんも私もきっと凄く困惑した顔をしていたんじゃないかと思う。
私は畳み掛けるように言った。
「わたしね、やっぱり柊くんの事が好きなんよ。柊くんと居たらやっぱり好きって思っちゃう。友達には、戻れないよ、ぜったい戻れない」
私は彼の顔を見ることができなかった。
柊くんはうん、と言って歩いていた湖の広場の脇の、小さなベンチに腰掛けた。
彼の口からひんやりと吐かれる息は白くキラキラと夜空に解き放たれては、すうっとむなしく消えていくだけだった。
「だからもうやめよう、柊くんはきっと私が居なくても大丈夫だよ」