恋する想いを文字にのせて…
「良くないわよ!帰ったら最後、もう会えなくなるのよ!小野寺さんはそれで平気なの⁉︎ 」

「平気も何も…ご主人や子供さんもいるんだから、俺は関係ないでしょう……」



なんの八つ当たりだよ……と思わずにはいられなかった。

萌子さんは小さく舌を打ち、「あれ程お願いしたのに、何も分かってないのね…」と、呆れるように言葉を吐いた。

釈然としない俺の耳元に、津軽先生の穏やかな声が聞こえてきた。


「小野寺さん……貴方、クルミさんのことを何も知らないのね。文通している間、彼女は貴方に何も明かしてなかったんだわ……」

「明かすとか明かしてないとか何のことですか⁉︎ 聞いてないといけない様な事でもあるんですか⁉︎ 」


とうとう頭にきて言い返した。
傷口を抉られている様な痛みを感じながら声を荒げた。


「あるなら教えて下さい!今更でも何でも聞きますからっ!!」


俺たちの関係のは終わったんだ。
所詮は文字の上にのせた想いが、相互に行き来していただけの仲。
秘密や嘘の一つや二つ、あってもおかしい事ではない。



「教えて差し上げるわ。だからこの家に来て。あの日、彼女が私達に教えてくれた事を貴方に包み隠さずお話しするから……」


強い覚悟を持って来るように…と付け足されて電話が切れた。

あの日、彼女が2人に話した内容は自分自身のことなのか。

それを聞いたからと言って、今更何が変わるとも思えないけれど……。


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