恋する想いを文字にのせて…
クスクス…と笑いを噛みしめた。

小野寺さんの人柄がストレートに出ている文面は、私の心を強く惹きつけて離さなかった。



『津軽 芽衣子』の作品は、正しく『昭和』を代表するものだと私も思う。

あの頃にしか描けなかったものを、先生は見事に花開かせてくれたと感じている。



ーーー多くの人々が、先生の漫画で心を潤わせた。

そして、私自身は中でも一番のファンであった。



漫画の全てが私の青春だった。

そして『津軽 芽衣子』は、今でも私の永遠の憧れだーーー。




この手紙の返事を書く時、問いかけに対する答えを書かなくてはいけないのかもしれないけど。



……妙にはぐらかしておきたい気持ちが動いた。

何もかも曝け出してしまえる程、私たちの関係性に密なものない。



……ただの文通相手としての付き合いだけで良かった。

それが物足らなくなったとしても、会うことなど叶わない相手に過ぎない。



小野寺 漠さんという方にどれだけ強い興味を抱いても、それを現実のものにする事など決してあってはならないことなんだ。


始まったばかりの文通に心をときめかせるだけでいい。

時間を忘れて読み耽るだけが、唯一の楽しみであればいい。


願わくばこのまま、いつの日か便りが届かなくなるといい。


その方が私にとっては、一番有難いことになるのだからーーー。


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