恋する想いを文字にのせて…
けれど、生活は苦しくなっていくばかりで……さすがに心も荒んできました。

当然のことながら喧嘩の数が増え、それを修復するのはいつも夜になってからでーーー。



……彼を受け入れてやることで、自分は間違っていないと信じたかった。

故郷に足を向けられないことをしていたのに、それを正当化しようとしていたのです。』



再び空いた行間の中に、円のように落ちた涙の跡を幾つか見つけた。
苦しくなってくるような心の重さを受け止めながら、再び始まった文字に目を落とした。



『でも、ひょんなことから妊娠してしまい、堕ろすことも恐ろしくなった私は、お腹の中に宿った命を産むことを決めました。

…なのに、彼はそんな私とお腹の子を捨てて出て行ってしまった。


ーー今、彼が何処に住んで、何をしているのかは知りません。

父親のことを何も知らずに生まれ育った我が子は、今年で10歳になりました。


ちょっと難しい子で……時々大変な思いもしますが、母親思いの優しい子に育ってくれて、それだけは父親に似ずに良かった…と感謝しています。


けれど、独りきりの子育てにはやはり限界を感じています。

我が子には障害があり、その発作が年を増す毎に変化しているーー。

通い続けているクリニックの心理士からは、『頼れる方をお作りになっては?』と言われたけれどーーー





誰がそんな子の面倒を見てくれるでしょう?

親の私ですら時に放り出したくなると言うのに……。』






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