恋する想いを文字にのせて…
お幸せになって下さることを心より願っています。

本当にいろいろとありがとうございました。




さようなら…小野寺さん




最上 来未 』





涙の跡は、名前の横が最後だった。
『未』の字を二度書きしたような跡を見つけ、電車に飛び乗った。



彼女の住所は頭の中に刻み込まれている。
その住所を検索して、簡単に場所も特定できた。



会いに行くのは初めてだ。

今もまだ、そこに住んでいれば…の話だけれどーー。







(頼む……。どうかそこに居てくれ……!)



行方が知れなくなってから探すには手間がかかり過ぎる。
余計なことは何一つ書かれていない彼女の手紙は、1通以外全て処分してしまった。



今更ながら愚かすぎる自分を恨んだ。

俺は自分から蒔いた種を、収穫もしないまま放り投げたんだーーー。




「新たな何かを背負い込むことになるかもしれないわよ。それでも平気?大丈夫?」



津軽先生の言葉の意味がようやく分かった。

彼女の手紙を読んで、少しだけ理解ができた。





(でも、まだまだこれからだ……)





ホワイトの紙にのせられてきた想いを受け止めて、形にできるかどうかは予測できない。


ただ、もう彼女1人にはしておけない。


心の中に隠している重荷を、全部自分に吐き出して欲しい。




……分けて貰いたい。


そうすることで、初めて彼女に近づける気がする。


そのカギを握る住所を目指して、今はただ、急ぐだけだーーー。



< 124 / 179 >

この作品をシェア

pagetop