恋する想いを文字にのせて…
息子の純也(じゅんや)と手を取りながら自宅へと向かう道すがら、雪の中で髪に触れた彼の手の感触を思い出していた。
あの手に抱きとめてもらいたかった。
「甘えていいんだ…」と言われたかった。
全ては夢で終わった。
でも、それは当然すぎる出来事だ。
あの町を捨てた時から、私の人生に明るい色は差してこない。
だからせめてレターセットだけは、明るい色を選び続けた。
何処へ送らなくても、心に明るい差し色として残ればいいーー。
八百屋の店先で初物のイチゴを買った。
それにミルクをかけて食べたい…と純也が言ったからだ。
ビニール袋を持たせて歩く帰り道。
自分の住むアパートの前で、信じられない人と出くわしたーーーーーー。