恋する想いを文字にのせて…
(不思議だわ……あの子が初対面の人に心を開いてる……)



ぼんやりと眺めている私の肩に手が乗った。

あの雪の日に触れられた時と同じ感情が、心の中を揺り動かした。



「手紙、読みました。つい、さっき…」


短くそう言うと、ぎゅっと口角を噛み締めた。

肩の上に乗っていた手は背中に降りて、そっ…と抱き寄せられた。



「良かった……まだここに居てくれて………」



涙の入り混じりそうな声に驚いて見上げた。

下瞼が潤んでいる人の顔を見つめ、こっちも涙が溢れそうになった。


「津軽先生に話を聞きました…。来未さんが先生達に話したことを聞いた後、オフィスに戻ってこの手紙を読んだんです……」


スーツのポケットから出された白い封筒を見せられた。

鳩が浮き彫りにされたレターセットには、幸せを運んできてくれた彼への感謝と幸せになって欲しいという願いとが込められていた。


「あの日、来未さんから別れを告げられて…俺は自暴自棄のまま手紙を処分した…。でも、どうしてもしきれないものがあって……」


出されたもう1通の手紙に目が留まった。

キレイにラッピングされた封筒を見て、彼の顔を見つめ直した。


「この手紙は……俺にとっては故郷の景色と同じです。だから、どうしてもシュレッダーにかけれなかった…。これが特別なものだと言った来未さんと同じく、俺にとってもこの手紙は大切で、特別なものなんです……」


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