恋する想いを文字にのせて…
背中に回していた手を離し、彼が封筒をポケットにしまい込んだ。

その場所に手をやり、息を吸い込みながら目を閉じて吐きながら瞼を開いた。




「俺の両親は…………殺されたんです……。今から……15年ほど前に……」



耳を疑うような声に驚いて目を見開いた。

彼はそんな私に視線を向け、淡々と過去を話し始めた。




「当時の俺は、都内の大手出版社で仕事をしていました。それなりに仕事も忙しく、順調に稼いでいた日々でした。…盆休みの帰省で実家へ戻ったのは1年ぶりくらいだったと思います。その家の前に人集りが出来ていて、いったい何事かなと思いながら…近寄って行きました…」


小野寺さんは話しながら、少しだけ間を空けた。

口にする言葉は重そうで、次の言葉が始まるまでにハラハラしながら間を持て余した。



「……俺の姿を一番最初に確認したのは、隣に住んでいる老夫婦だった。おじいさん達は俺のことを待ち構えていたかのように、『大変なことが起きた!』と声を上げたんです。…信じられないことを耳にして家の中に駆け込みました。寝室の和室の中に広がった惨事を、未だもって忘れたことなど無い…!忘れられないんです!……あまりにも、酷過ぎて………」



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