恋する想いを文字にのせて…
「俺がオフイスに居残るのは、あの日の惨事が忘れられないからなんです……。暗い家の中に両親の遺体が転がってるような気がして、今も怖くて堪らない時がある……。眠れない日は導入剤の世話にもなります……。15年経っても、俺の中では今も地獄のような日々が続いてるんです……」


編集長である先輩は、俺のそんな事情を知っている。

疲れが溜まっているような時は、オフィス内の休憩室で幾らでも休め…と言ってくれているのだ。


「さっき、来未さんの子供のパニックぶりを目の当たりにして、まるであの日の自分のようだと感じました。…俺は大人だったから、誰にも慰めてもらえなかった。……でも、子供だろうが大人だろうが、混乱している時は誰でも、誰かに慰めて抱き留めて欲しいもんだと思うんです。だからさっきはそれもあって、彼を思わず抱き上げてしまった……。掛けた言葉も、いつも自分に言い聞かせている言葉なんです。『男だから泣くな。強くなれっ!』って………情けない話ですよ………」




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