恋する想いを文字にのせて…
口元には笑みを作っている人の目は、少しも細くなっていなかった。

その表情の裏に隠された切なさに、キリッと胸が痛くなるのを感じた。



「…来未さんの思いも聞かせてもらっていいですか。どんな気持ちでもいいから吐き出して下さい。…君は本当に故郷へ帰ることが彼の為になると思っているんですか?返って火傷を負わせたり、自分が傷つくことはないんですか?」



小野寺さんの言いたいことは分かっている。


抱えている苦しみを故郷の肉親に分けて、あわよくば自分が楽になれればいい……と考えている、その心の狭さを敢えて図星されたような気がした。



「例え火傷を負っても、傷を負うことになっても……血の繋がりがある人達の元へ純也を連れて帰ろうと思います…。手紙にも書いておりましたが、あの子には発達障害もあります……。人混みが苦手で、騒がしい所ではさっきの様なパニックも起こしてしまう……。予定外の出来事でそれは直ぐにでも発動されて、落ち着くまでに何時間もかかることだってあるんです……。現に、津軽先生の家へ訪ねることになっていた朝もパニックを起こして……幸いその時は軽くて済んだけど、どこに居てもそれが気掛かりで、私は夜中でさえも目が覚めてしまうこともあるんです……」


夜中に起き出して手紙を書いたり漫画を読んだりしていたのはそのせいだ。

精神的に自分を落ち着かせる為の道具として、便箋に文字を埋めていた……。





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