恋する想いを文字にのせて…
15通目、色は塗り替えられて
騒つくゲートの外は、あっという間に静かになった。

窓の外には暗闇の空が広がり、とっぷりと日の暮れた港内に人影は疎らな状態だった。


カツッ…と響く靴音に辺りの静けさを感じながら進んだ。

待合席には誰も掛けておらず、キョロキョロと左右を見回した。


左手のガラス張りのブースに案内所を見つけ、そちらで聞こうかと向かい始めた時、背中越しから駆けてくる軽い足取りに振り返った。


赤い頬をした女性は、白く蒸発する息を弾ませて胸の中に飛び込んできた。

いきなりな行動に驚いて、抱き返すのも忘れてしまった。



「お帰りなさい…」


小さな声は苦しそうな呼吸の間から聞こえた。

埋もれていた顔が上がり、短い呼吸をしたまま微笑んだ。


ひと月しか経っていないのに、何年も会わないような感動が身を包んだ。
頭ごとかぶりつきたい様な気がして、きゅっと胸に押し込めてしまった。



「ただいま…」



何年間も吐いたことのない言葉を言って涙した。
短い言葉の中に、これほどの強い感動を感じたことはなかった。


収められていた女性は、トントン…と掌を打って苦しさをアピールした。
それに気づき、慌てて腕の力を緩めた。



「ごめん。つい…」


謝る俺を見つめ、ううん…と首を横に振る。

まじまじと顔を見合わせ、なんとかキスしたい気持ちを抑え込んだ。



「車でお迎えに来ました。こっちです」



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