恋する想いを文字にのせて…
「気楽!気楽!」


あはは…と笑い飛ばしてデスクの上を見た。
昼間放った手紙が目に止まり、指で摘んでみた。


「…暇潰しに読んでみるか……」


何気なく読み始めた手紙に書かれてある内容は、戸惑いを露わにされていた。


『いきなりお手紙を差し上げてしまい、申し訳ございませんでした。ファンレターをどこへ送っていいか分からなかったので、取りあえず出版元の方へ送らせて頂きたいと考えました。』


話し言葉のような始まりには、声が混じって聞こえてくるようだった。



「ファンレター?誰にだよ…」


時候の挨拶もなしに書き綴られた文字は、間違いなく女性のものだと思われる。

縁もゆかりもない人からの手紙は、その後の時間を忘れるくらいの清々しさがあった。



『私は、最上来未(もがみ くるみ)という者です。ご挨拶が遅れましたが初めまして。小野寺 漠 様』


見事過ぎる筆跡の割に間の抜けた感じが可笑しかった。
素直そうな人の性格を、その数行の文から読み取った。


『先日、本屋さんの新刊コーナーで『津軽芽衣子』のセレクトブックを見つけました。

私は学生の頃から津軽先生の大ファンで、それを見つけた時には思わず躍りだしたくなるくらいの嬉しさを覚えました。

少々お値段の高い本でしたからすぐに全部を買い揃えるという訳にもいかず、一番大好きだった話が載っている本を一冊だけ買い求めて帰りました。

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