恋する想いを文字にのせて…
派手ではなく、可愛らしい感じの画だった。

都会ではなく、いつも田舎の風景を舞台にしていた。

小高い丘から見下ろす町の描写も、可愛らしいお店が立ち並ぶ通りも……何処か自分の故郷に似ていた。


メルヘンチックな街並みを舞台に繰り広げられる恋物語は、いつの日か自分も同じようにこの町の何処かで誰かと恋に落ちるのではないか…と思わせた。



恋する想いを漫画の中に抱いたまま大人になった。


いつしかそれを忘れたまま、今日まで生きてきた。


小野寺さんがこの世に津軽 芽衣子の作品を蘇らせてくれるまで、私は過去の幸せすらも全部、見失い続けていたーーー。





「ありがとう…」


手紙の分も一緒にお礼を言った。

抱きしめた本の温もりは、漫画を読んだ後と同じ温かさに満ち溢れている。

一方通行のままで良かった手紙に、わざわざ返事をくれた人。

筆圧の強い丁寧な鉛筆文字を思い浮かべながら、その日は一日、ハッピーな気分で過ごさせてもらった……。



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