恋する想いを文字にのせて…
早く返事をしたくてケータイを握りしめた。

アドレス帳の中から選びだした相手のタイトル欄にこう文字を入力した。





『手紙を読んでくれたアナタヘ』


苦手なキーボードを指の腹で操作しつつ文字を打ち込んだ。


手紙と同じように、丁寧に心を込めてーー。




『再来週の水曜日、先生のお宅に伺いたいと思います。そちらのご都合はいかがでしょうか? 最上』



性別が分からないように名字だけのメールを送信した。

小一時間ほどして、小野寺さんからも同じような返信があった。



『再来週の水曜日の件、了解致しました。時間と場所については、またご連絡差し上げます。BK』



(BKって……漠ってこと…?)



「やだ、もうっ!返って怪しすぎるって!」


可笑しいのと嬉しいのとで笑いが弾けた。

彼に会えることが堪らないほどの喜びだと感じていた。



それからずっと憧れ続けてきたあの人にも会える。



……会って全てをお話しよう。



そして、新しく生き直すんだ……。





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