恋する想いを文字にのせて…
最上来未はそう言うと、急に黙ってしまった。

視線は田畑の風景を彷徨っているが、心では別のことを考えてるようだった。


出会ってからの態度がずっと変だと感じていた。

前にホテルで会った時よりも今日は年齢相応のような雰囲気をしている。

どこか疲れてるようにも見えるし、何かを悩んでるようにも思えた。



(何があったか聞いても無駄なんだろうな。俺のことを知りもしない彼女にしてみたら信頼もできないだろうし……)



ほぅ…と吐いた息が白い。

その吐息が蒸発して、透明になっていくのを黙って見つめた。




「あの……」


後ろから遠慮がちな声がした。

顔を半分だけ向けて、「何ですか?」と尋ねた。

白のタートルネックのセーターを着ている最上来未は、オレンジ系の色に塗られた唇を開いて囁いた。



「もしかして…と思うんですけど、あれが津軽先生のお宅じゃないですか?」


指し示す方向を見た。

田園の中にぽつんと置かれたような三角屋根の家があった。




「…そうだよ。よく分かったね!」


振り向いて答えた俺の言葉を聞いて、彼女は目を見開いた。


「やっぱり!思ってた通りの家だわ!!」


ステキ、ステキ…!と急に燥ぎ始めた。

いきなりどうしたのかと面喰らう俺に、彼女は少しだけ態度を改めて言った。


「私、ずっと先生のお宅は三角屋根か和風建築の平屋だと思ってたんです!だって、漫画に出てくる家がいつもそんな雰囲気だったから…!」


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