恋する想いを文字にのせて…
通された部屋からは裏庭が見えていた。
ロックガーデン風に設えてある庭には、薄っすらと雪化粧がされている。


「どうぞ、こちらへ」


手招きされる席に近付いた。
先生は椅子を引き、「ここへ座って」と示した。



「失礼します」


遠慮がちに腰掛けると、お姉さんがトレイを持って入ってきた。


「今日は寒いからジンジャーレモンティーにしたわよ」


薄いレモン色をしたお茶は湯気を立てながら注がれる。
それを見つめながら、自分がまるで漫画の世界に入り込んだような錯覚を覚えていた。



先生のご自宅は、想像していた通りの感じだった。

壁に掛かる柱時計もレース編みのクロスが掛かったテーブルも、小花柄のティーセットも椅子に掛けられてあるカバーでさえも、何もかもが漫画の中と同じ雰囲気だ…と実感した。

あの名作の数々が、ここで生まれたんだ…と思い知った。


湯気の立ち上るカップは、レモンの香りとともに目の前に置かれた。
横に置いてある小皿には、一口大のクッキーが盛ってあった。



「そのクッキーは姉の手作りなの。豆乳とゴマが入ってて身体にも優しいのよぉ」


漫画と同じように話す先生の顔をまじまじと見つめてしまった。


上手く話し出せない私に代わって、小野寺さんが会話し始めた。




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