恋する想いを文字にのせて…
少しして茶封筒を抱えて帰ってきた人を彼女はぽかん…と眺めた。



「多分、この話じゃないかと思うんだけど…」


テーブルに置かれてあったポットやカップを避けた場所に、油紙で包まれた原稿が置かれた。

最上来未は椅子から立ち上がり、体を震わせながら開かれていく紙の様子を見つめている。

黄土色っぽい紙の中から現れた白いケント紙には、背中を向け合う男女のイラストが描かれてあった。




「そうです……この漫画です………」



信じられない様な顔をして、最上来未が呟いた。

最高傑作だと称した原稿は、彼女の教えてくれた通りのストーリー展開だった。



「さっき言ってたこのパスタのシーンね、実は私の実体験なのよぉ」


原稿のシーンを指差して萌子さんが笑う。
それを知っている津軽先生も、クスクスと笑い声を立てた。

1人涙と戦っている彼女は鼻をぐずつかせながら、「そうだったんですね…」と囁いた。


「この男の子も当時付き合ってた人がモデルなの!とっても硬派な方でね、何を考えてるのか分からないくらい本当に近寄って来なかったのよ。芽衣ちゃんはその話を聞いて、この漫画を描いたってワケ!」


「だって、聞いてるだけで面白かったのよぉ。目も合わさない、言葉も交わさないデートをした…と聞いて。でも、この男の子みたいにシャイだったワケじゃなくて、単にデレデレするのがイヤだっただけみたい。昔の男性ってそういう人が多かったの。今で言うなら『ツンツン』ってトコかしら〜?」


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