恋する想いを文字にのせて…
「ツンツンじゃないわよぉ〜。パリッとしてたの!カッコ良かったんだからぁ〜!」

「はいはい。でも、結局フられたでしょ?お姉さんは」

「フられたとか酷い言い方するわねぇ。自然消滅と言ってよ〜」



「……自然消滅したんですか⁉︎ 何故?」


口を挟む俺に2人の視線が注がれた。
ニヤつく表情に気づき、萌子さんがチッ…と軽く舌を打った。


「このモデルの人ね、東京の大学に進学したの。とても頭のいい人で有名な国立大に合格しちゃったから離れ離れになっちゃったのよ」

「…今は何してるのかすらも知らないわぁ〜。でも、あのまま付き合ってたら、きっとこんなふうに2人で暮らしてなんかいなかったわね〜」


昔を懐かしむように微笑んでいる。

その様子を津軽先生は目尻を下げて見守っていた。



「……お二人はずっと一緒に暮らしてるんですか?」


涙の止まった最上来未が話しかけた。
テーブルの上には、彼女が忘れられないと言ったページが開かれていた。


「そうよ。姉は結婚もせずに私の漫画家人生を支えてくれたの。ある意味、私の漫画の為に自分の人生を犠牲にしたと言ってもいいくらい。だから私にとって姉は誰よりも大切で大事な人。何があっても守っていかないといけない。それが私に出来る唯一の恩返しだから」


「恩返し…」


最上来未はそう呟いて、テーブルの上に広がった原稿を眺めた。

目線の先に描かれた歩道橋は、故郷である九州の風景らしい。

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