恋する想いを文字にのせて…
津軽先生の家を離れ、作家の家で原稿を受け取った後、「茶でも一杯」と勧められるのを断って電車に飛び乗った。

昼はとっくに下がり、先生の家に着いたのは午後1時を過ぎた頃ーー


「どうも、お待たせ致しました」


申し訳ない気持ちで中へ入ると、最上来未は「いえ…」と暗めな表情で答えた。


「誰も貴方を待ってなかったわよ。私も芽衣ちゃんも最上さんのお話を聞いてて楽しかったし…」

「小野寺さんはそのまま会社へ戻られても平気だったのに。…律儀ねぇ相変わらず!」


津軽先生までがそう言って邪気にする。

姉が姉なら妹までも…と、少々ムカついてしまった。



「遅くなったけどお昼ご飯にしない?朝から準備していたシチューが美味しく煮えている頃よ。大したものは作れないけど、折角だから食べて行って」


立ち上がる姉妹に遠慮しながらも、遅めの昼食を済ませて外へ出た。

雲の立ち込める空からは、粒のような雪が舞い降り始めている。



「今夜はまた積もるのかしら…」


ケープを羽織り直しながら、萌子さんは空を仰いだ。
その横で、津軽先生は最上来未に向かって声をかけた。


「クルミさん、今日はわざわざおいで下さってありがとう。またお会いしましょう。…お元気でね」


会った時と同じように彼女の手を包み、顔を覗き込む。


「こちらこそ我儘を聞いて頂きありがとうございました。今日のことは一生忘れません。これからも先生の漫画を読み続けて頑張ります」

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